堂島川沿いのご近所では、シルク・ド・ソレイユ(サーカス)が開催されていますが、16日(金曜日)には、de sign de > において、ビヨンド・ザ (坐)・フェンス(パフォーマンス公演)が開催されました。
ビヨンド・ザ (坐)・フェンスとは、カウンセラーでありファシリテーターの橋本久仁彦さんが主宰するパフォーマンス(即興演劇)集団で、通常の台本のあるお芝居と異なり、お客さんの「言葉」や「物語」をパフォーマンスの題材として、その場で表現を展開していきます。
橋本さんは、de sign de > が設立された昨年の9月に、第一回目のde sign de > talk のゲストとして「コミュニティーのための場とプログラム」というテーマで服部滋樹氏(当館コミッティー)との対談を行なっていただいた方で、そうしたご縁もあり、今回の特別公演を開催する運びとなりました。
※ talk の様子は、web上のアーカイヴ からご覧いただけます。
写真中央がコンダクターを務める主宰の橋本久仁彦さん
パフォーマンスを行う役者さん(フェンスアクター)は全員で10名程で、2つの組に分かれて、タームごとに交代で行為が行われます。
開始前に、結坐する(公演を行う)場所や空間、お客さんに敬意を表し、正座・一礼が行われます。
ここで、ビヨンド・ザ (坐)・フェンスの公演の流れについて、橋本さんの言葉を借りて少しご説明をすると、
「ビヨンド・ザ (坐) フェンス “鈴振り劇場” では、自分たちの脚本を上演するのではなく、鈴を振ってくださったお客様のお声を聞かせていただいて、役者が即興で舞踏や演劇作品として上演していきます。日常の出来事や心境を語ってくださったお客様は、その時々の人生の一場面を開いてみて、ご自分が生きている(輝いている)姿を見ることになります。フェンスアクター(岩戸役者)は、お客様の人生のある特定のシーン(空間)や人物に同期・共振して、そこにある動きや形象を、身体や舞台上に転写(転送)します。」
とのことで、つまり、その場に応じて、お客さんから発せられる「言葉」や「気持ち」がテーマとなり、鈴を振って、言葉を発した本人の「個人的な思考」が、役者さんの身体を通じて具現化(可視化)され、本人を含めた他者に伝わる、という構造となっています。

ビヨンド・ザ (坐)・フェンスのパフォーマンス公演において、重要な役割を果たす(お客さんと役者をつなぐ)鈴。観客一人に1つずつ配られます。
最初は、「その時の気持ち」というテーマで、橋本さんからお客さんに投げかけがあり、しばしの沈黙のあと、鈴が鳴り、一人の方から言葉(思考)が発せられました。
お客さんからの言葉に傾聴し、じっと表現(アウトプット)の瞬間を待つ役者さんたち。
お客さんからの発言(物語)が終わると、橋本さんの一言をおいて、役者さんの反響(リフレクト)が開始されます。

一人のお客さんから発せられた思考(発言)を受けて、役者さんが即興で身体表現(セリフを含む)を行います。役者さんは個々に動いていきますが、その場で即興的に関係性が構築され、ストーリーが重層的に展開されていきます。
お客さんから発せられた言葉は、きわめて個人的な思考であり、本来ならば、その人の心のなかにのみ存在する(留め置かれる)言葉なのですが、そうした言葉が会場に発信され、それを受けて、役者さんが「傾聴(インプット)→ 表現(アウトプット)」を行うというプロセスは、他者(他人)の内在的な物語を写し鏡を通じて共有するような行為であり、言葉を発した人にとっては、役者さんによって反響された個人的体験を、他者(他人)に知覚されるという、きわめて輻射的な構造であるとも言えます。
(余談ですが、この構造の話をして、すぐさま柳幸典氏の《バンザイ・コーナー》を想起された某先生は流石だと思います。)
こうして、約2時間の公演の中で、短かな言葉から、個人の悩み、自己の目標やテーマまで、お客さんの「ありのままの気持ち」のようなものが、橋本さんのコンダクトと役者さんの表現によって、ゆっくりと展開されていきました。(時には、会場の誰もが鈴を鳴らすことなく、3分以上、沈潜する思考と向き合うという時間もありました。)

そうした長い沈黙のあと、鈴を鳴らされた方は・・・、お忙しい中ご来場いただいた当館コミッティーの三木健氏(写真右)でした。
三木さんからじっくりと語られた「デザインに対する思い」をうけて、物語を反響させていく役者さんたち。三木さんはこの表現をうけて、『理念の声』という言葉(題名)を返されました。
最後に一礼をし、あいさつをする橋本さんと役者の皆さん
ビヨンド・ザ (坐)・フェンスは毎月かならず何処かで行われている密やかな精神劇で、今回は70回記念(約6年半継続されているそうです)ということで、de sign de > で開催いただきました。
おそらくこうした演劇は、国内でもかなり稀有なアプローチであり、コミュニケーションや演劇論の視点からみても語るべきものが多い実践であるといえます。 今回はご紹介と感想のみではありますが、興味を持たれた方は、ぜひ実際にご参加いただき、その場を共有・体験いただければ幸いです。
橋本さん、役者の皆様、そしてご来場いただいた皆様、どうもありがとうございました。
シアター・ザ・フェンスについて
公式サイト http://ptproduce.com/cn26/faboutus.html